離婚後の事実婚関係が認められた再審査請求案件

 夫(死亡者)が事業の失敗により、土地建物を離婚に伴う財産分与とする為、妻の名義にしました。そのため住民票が別住所で、生計同一要件がなしとされ、遺族厚生年金が認められなかったケースを取り上げます。

経 過

厚生年金保険の被保険者であった夫(A介とします)が死亡し、内縁の妻(元妻のB子です)が遺族厚生年金の請求をしました。

保険者(決定をした日本年金機構)は事実上婚姻関係と同様の事情にあった者と認めるが、B子はA介によって生計維持されたとは認めないとして遺族厚生年金の支給を認めませんでした。

平成23年3月に厚生労働省年金局長が日本年金機構理事長あてに「生計維持関係の認定基準及び認定の取扱いについて」という通知を出しています。それによると、離婚後の内縁関係の取扱いについて次のように規定しています。

離婚の届け出がなされ、戸籍上も離婚の処理がなされているにもかかわらず、その後も事実上婚姻関係と同様の事情にある者の取扱いについては、その者の状態が次の要件に該当すれば、これを事実婚関係にある者として認定するものとすること。

  • 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。
  • 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在する事。

生計同一要件

今回のように、住民票が異なっていて生計維持関係が認められるには、生計同一要件を満たす必要があります。

  • 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき。
  • 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき。
    (ア)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
    (イ)定期的に音信、訪問が行われていること

審査会が生計同一要件の➀が該当するとして遺族厚生年金の権利を認めた理由

○ 住民票を別にした理由が、一定程度やむを得ない理由である事

○ 死亡者A介が再就職するとき、会社に提出した履歴書の配偶者欄に請求者妻B子の氏名を記載している。

○ 自動車保険契約の契約内容を募集人が確認した際、二人が同居していることを確認してい

  る。

○ 複数の連名の年賀状がある。

○ 請求者B子の携帯電話が主回線で、夫A介の携帯電話を副回線とするファミリー割引及び一括請求の契約がされている。

○ 別々に転居する際の事情についても、一時的なものと伺われ、別居状態に移行したとまでは言えないこと。

以上のような理由から、請求者B子は死亡者A介により生計維持されていたと認定されました。

         

再審査請求裁決の主文

再審査請求人の主張である遺族厚生年金の支給を認める。

    

この記事は、リスク法務実務研究会のホームページ(http://riskhoumu.com)に「人生いろいろ年金もコロコロ」として投稿させていただいております年金受給に関する事例です。

                                             

はじめまして

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