初診日が原因で請求が困難な事例

障害年金申請において、障害の原因である傷病発生の前に、一定程度の保険料納付要件を満たさないといけないことから、傷病の初診日を特定し、それを証明した書類が求められます。その書類のことを「受診状況等証明書」といいます。

糖尿病の場合、その書類が用意できないことがよくあります。糖尿病の初期症状は、体に異変が出ないことが多く、適切な管理をせず10年、20年と長期間にわたり放置すると網膜症・腎症・神経障害・虚血性心疾患・脳梗塞・閉そく性動脈硬化症等の慢性合併症が発症します。最終的に失明・透析・足切断にまで方進む方もいます。

こういった方の障害年金申請で壁となるのが、時間が経過していることにより初診日の証明書が取れないことです。

ここで紹介するのは、平成27年の裁決例で、3番目の医療機関受診日を認定された糖尿病腎症から人工透析に至ったケースです。

経緯

請求時50歳の女性、糖尿病の初診病院は昭和63年、廃院となっています。

2番目の病院は終診から5年以上経過しているのでカルテが廃棄されている。結局、初診日が確認できず不支給となったものです。

約2年後の再審査請求でやっと3番目の病院を初診日として認められることになりました。

当初、本人が年金事務所の窓口で「糖尿病に関して初めて何か言われた時が初診日であり、記憶に基づいたあいまいなものであっても、一度口にした以上はその日を記載しない限り不正請求に当たる」と告げられ、初診日を証明する資料が全く何もないまま提出したところ不支給となったのです。

本来の初診日の意味は、初めて医師の診療を受けた日(治療・服薬・療養の指示等がある)のことなのです。

会社の健康診断等で再検査を指摘されただけでは初診日とされませんし、その日が本当に初診日として適切なのか考察する必要があったのです。

ただ、年金事務所の職員から指導されたことなので素直に従い、これほどまで大変なことになるとは全く想像もしていなかったことでしょう。

何十年も厚生年金保険料を支払ってきて、認められないとは到底納得がいかなかったのでしょう。社会保険労務士に審査請求・再審査請求を依頼しました。

審査会の判断

初診日を障害給付の受給権発生の基準となる日と定めている趣旨からいって、直接診療に関与した医師又は医療機関が作成した診断書、若しくは医師ないし医療機関が診療が行われた当時に作成された診療録等の客観性のあるいわゆる医証の記載に基づいて作成した診断書、又は、これらに準ずるものと認めることができるような証明力の高い資料(「初診日認定適格資料」)によって行わなければならないものと解するのが相当である。

経過は省略しますが、

本件において初診日認定適格資料として取り上げなければならないのは、本件診断書、H25年の受診状況等証明書(2通)、診療情報提供書(紹介状)、身体障害者手帳であり、これらをおいて他に存しない。

3番目の病院の初診日「平成9年8月4日」、終診年月日「平成17年4月21日」。

治療内容及び経過の概要「平成9年8月4日腰痛を訴え来院された。その際の血糖213mg/dl、HbAlc7.1%でした。

糖尿病・高血圧の診断のもと治療を行うことにしました。

糖尿病については当初食事療法を行いましたが、平成10年9月から服薬治療を行いました。」とあり、その後徐々に悪化し、糖尿病の末期腎不全から透析の導入となるにいたった。

当該傷病と糖尿病は、相当因果関係が認められるので、請求人がクリニックを受診し糖尿病と診断された、平成9年8月4日を本件初診日と認めるのが相当であるとしました。

現在の判断基準

初診日の証明書が取れずに障害年金を断念せざるを得ないケースが多いことから、日本年金機構も徐々に提出書類の制限を緩和するようになってきました。

現在では、以下のような書類も認める際の判断とするとなっています。

(1)20歳以降に初診日がある場合
  ・第三者証明(2通)と参考資料
  ・初診日頃に受診した医療機関の医療従事者による第三者証明(1通)を用意する

(2)20歳前に初診日がある場合
  ・2番目以降に受診した医療機関が作成した受診状況等証明書又は診断書を用意
  ・第三者証明(2通)を用意する
  ・初診日又は20歳前の時期に受診した医療機関の医療従事者による第三者証明

(3)その他の証明方法
 ①初診日が存在する期間を証明する参考資料を用意する方法
  ・受診状況等証明書が添付できない申立書
  ・一定期間の始期に関する参考資料
  ・一定期間の終期に関する参考資料
 ②請求者が申し立てた初診日に関する参考資料・初診日の記載された、請求の5年以上前に医療機関が作成した
  カルテ等を用意する方法
  ・受診状況等証明書が添付できない申立書
  ・請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテ等であって、請求者

早い請求手続き

障害を抱えながら初めて請求をする方にとって、上記のような証明書類を揃えることは、非常に困難だと思われます。

当職もこれまで急激な糖尿病悪化により失明と同時に大腸がんになった方、30年位前の泌尿器科の紙の受付簿で初診証明が認められた方、人工透析でしかも片脚切断になっているけれども、20年前のことなので初診の証明書が取れない方等の申請手続きの援助をしました。

費用の関係から無理をして自身で手続きをされる方も多いのですが、糖尿病はその多くが事後重症請求(障害状態が徐々に悪化して等級に該当したもので、請求月の翌月分からの支払い)なので、1月でもスピーディーに請求手続きをおこなうことが必要です。

この記事は、リスク法務実務研究会のホームページ(http://riskhoumu.com)に「人生いろいろ年金もコロコロ」として投稿させていただいております年金受給に関する事例です。

はじめまして

福岡県障がい・遺族年金相談室のホームページにお越しいただきありがとうございます。所長の社会保険労務士、堀江玲子と申します。平成16年に開業し今日まで17年間障害年金および遺族年金をメイン業務として続けています。相談を受けたお客様は1万人を超えます。
障害年金は『初回が勝負』と言っても過言ではありません。
無料相談もおこなっています、どうぞ申請は専門家である社労士にご相談ください。お客様のお気持ちに耳を傾け、障害年金または遺族年金が受給できるよう最大限の尽力をお約束いたします。

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